課長の背中に

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 フラリ。  目の前がグルグル回りだした。マーブル状に景色が歪み、地面がゆっくりと近づいてくる。  ドサッ。  イテテッ。ちょっとお顔が痛かった。  遠くでバウバウと犬の声、ペロリと薄い舌が優しく頬を舐めている。  うっ…ナマグサイ。  ダイジョウブだよ、優しいコ達。  ちょっと寝てるだけだからね……  いや、もしかして、ヤバイのか? 『寝たらダメだ!』ってペチペチ頬を叩かれるシーン、山岳映画であった…ような……  __________  ヨツバ?……ミサキ……ミサキ…  夢を見た。  誰かが、何度も何度も私の名を呼んでいる、夢。  お父ちゃん?それともお母ちゃん?  いやこれは、若い男の人の声だ。  ならばもしや…これは私の王子様?  身体がフワリと宙に舞った。  大きな背中、上質の絹(シルク)。暖かくって広くって…それが凪ぎに抱かれるように心地好くゆらゆら揺れている。  イイにおい。  懐かしいようないつも身近で…どこかで感じたことのあるような……  ああそうか、ここは天国だ。    ならばカミサマありがとう。  可哀想な私のために、せめて天国で王子様に会わせてくれたんですね_____ 「ん、お…うじ…さ…ま」  (まったく…世話の……やける)
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