家政婦がミタ!

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 わっ、わっ…  私は焦りに焦った。  半透明のドアの向こうに写った影の大きさからすると、男性のようだ。  この家に住む、唯一の男性といえば…  ……カチョー……  もしかして、 『苦しゅうない、わいの背中(せな)を流しや』  という……  例のアレですかぁ~~~~~!!! 「あ、あわわ…」  む、ムリですそんな、私にはまだ心の準備ができません!  私は急いで逃げようと、広い湯殿の向こうに掛けてあるタオルを取りに立ち上がった。  (泳いで遊ぶんじゃなかった!)  が、正にその瞬間。  ガチャ。 「あ…」 「あれ?」  私はその場で固まった。  さらに悪いことには、扉の開く風圧でブワッと湯気が風に散って…  私は生まれて初めて、  包み隠すところのない、生まれたままの姿の異性の姿をハッキリと見てしまった。 「か…カチョ…あ、あ…」  目を逸らすことも、自分を隠すことも出来ないまま、私はその場に立ち尽くす。  なのに彼は、まるで気にする風もなく、少し首を傾げながら私に向かってやってきた。  動く……ダビデ像。 「…君、ダレ?」  ダビデの手が、私の方へ伸びてくる。 「き、き……」   キィヤアアアアアア……  ーふっー 叫びとともに、急に辺りが暗転した。
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