5人が本棚に入れています
本棚に追加
二人も初めてリーネスタルトを訪れたときには、このとてつもないプレイヤーの数に目を疑い、愕然とした。
聞くところによると、その数は万を越えるという。元の世界に一刻も早く戻りたいと願う者、突然のことに戸惑い困惑する者、動揺する者達も多くいた。しかし、大半の者はこの未知なる世界、ゲームの中にいるような世界に瞳を輝かせ、胸に希望を寄せ、歓喜していた。
二人は人混みの中を進み、ある施設へと向かっていく。
「それにしても本当にすごい人の数だね」
ユウナは少し呆れたような表情を浮かべ、人の合間を縫って歩く。
「う、うん…」
自分も人のことを言えたものではないが、プレイヤー達の活気は一線を画すものがあった。人々の年齢層は10代~20代の層が多く、ゲームが好きという者も数多くいる。
戦闘にも少しずつ慣れ始め、最初の拠点ともなりうるこの都市に来たことによって様々な施設や機能と出会い、新たな楽しみが増えていく。こんな状況、ゲーム好きの人間であれば誰しもが喜ぶ。
ハヅキもそんな人間の一人であった…が、どこかに引っ掛かりを感じる。何か大事なことを、重要なことを見落としてしまっている、そんな気がしてならなかった。
二人は人混みを抜け、目的の場所へとたどり着いた。【神殿】と表示された重厚感たっぷりの建物が構えている。
中に入ると神官の姿をしたNPCが出迎え、奥には祭壇が存在する。
ここにもたくさんのプレイヤーが往来しており、二人と同じ目的で訪れていると思われる。
その中でも一際プレイヤーで賑わっている場所があり、そこには他の神官とは装飾の異なる【神官長】と表示されたNPCが立っていた。
群がるプレイヤーが声をかける度にNPCは同じ文言を語りかけ、クエストを依頼する。
「これでよし…と」
長い順番待ちを終え、ハヅキ達もクエストの受注を果たした。
「もう限界…早く出てどこかご飯に行かない?」
「うん、そうだね…」
ユウナの提案にハヅキも賛同する。
これだけの人だかり。たとえ短時間でもかなりの疲労が溜まる。二人は早急にこの場を立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!