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「ん~、おいしぃ~!」 さらりとした髪の毛を揺らしながら、目の前の少女はスプーンを口に運び、顔を緩ませている。 「ん、ほんとだ!美味しい!」 ハヅキも手元に置かれた、装飾の施されたグラスに入ったプリンのようなものに舌鼓を打つ。 口に入れた瞬間、ほどよい甘みが口のなか全体に広がり、カラメルソースの絶妙な苦味が絡み合い、とろけるような口当たりが、口に含んだものを笑顔にする。 とてつもなく幸せそうな少女の表情を見て、ハヅキはつい笑みを浮かべる。 「顔に何かついてる…?」 「えっ、あっ、いや、そうじゃなくて…甘いもの好きなんだなぁ…と」 「甘いものは正義!!!」 ユウナはピシッとスプーンを向けた。 「は、はい…」 彼女のあまりにも鋭く、キレのある動き、真剣な表情に、ハヅキは思わず敬語で答える。 「そういえば、今日受けたクエストはどんな内容なんだっけ?」 ユウナはスプーンを再び口に運びながら確認する。 「えっと、ここから西に向かったところにある、【クーパの洞窟】の中の祭壇に聖印があるから、それを取ってくるってクエストだったかな」 「なるほど。このクエストをクリアすると、転職出来るようになるんだよね?」 「うん、そうだね!」 リーネスタルトには様々な施設があり、その中の一つ、神殿では、クエストをクリアすることによって職業を変更することが可能になる。 職業変更には様々な可能性が秘められており、一般的なゲームでは、条件満たすことによってなれる上位職があったり、技や魔法を引き継げたり、レベルカンストボーナスがあったり、などなど、プレイヤーの欲求を掻き立たせるような仕様になっている。 まだ、この世界においての職業変更がどのような利点をもたらすかは分からないが、クリアしておくことに越したことはない。 「この世界ではプレイヤーレベル、職業レベル、武器熟練度ってシステムがあるけど、職業を変更したときに変わるのは職業レベルだけで、プレイヤーレベルと武器熟練度はそのままって感じになるんじゃないかな」 「え…えーと…」 ハヅキの言葉にユウナは少し首を傾けていた。 「あ、ごめん、とりあえず細かいことはクエストをクリアしてから…だね」 どうしてもゲームのこととなると色々と考え、夢中になって話してしまう。自分の悪い癖が出たと、心の中で反省する。
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