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「なんか雰囲気悪くなってきたね…」
険悪な雰囲気にユウナの表情も大分引きつっていた。
「しょうがないといえばしょうがないのかもね。ゲームってさ、自分がやってる横で、その先を知っている人にあーだこーだ指図されるとあまり良くは思えないから…それと同じなんじゃないかな…」
気持ちは分かるとはいえ、ハヅキもさすがにこの場の雰囲気に息苦しさを感じた。
エスカレートしていくヤジをどうにか止めようと青年は必至に対応する。
しかし、そのざわめきは収まることを知らず、次々と周りの人々に派生していく。
「とにかく一回落ち着いて!冷静になって話を聞いてください!!!」
プレイヤー達の不満が最大限に達したとき、必至に叫ぶ青年の後ろで、ギィィィーーー…と音をたて扉が開いた。
中からは10人のプレイヤー達が次々と姿を現していく。
「いやぁー、なかなか強かった!」
「えぇ!でもベルウェザーの攻略書のおかげで勝てたわね!」
「これで職変が出来るな!」
攻略し終えたと思われるグループは口々に喜びの声を上げ、クエスト後に可能になる職業変更に目を輝かせながらその場を後にした。
並ぶプレイヤー達は、その様子をみてほとんどが落ち着きを取り戻した。
さらには
「この攻略書、よく見たらすごい便利だ!」
「いや、グループもちゃんとバランスを考えて組まれてるしすげーよ!」
などと手のひらを返すような態度を取る者まで出てくる始末である。
「皆さん!再度言いますがしっかりと協力しあって連携をとれば苦労する敵ではありません!この攻略書が少しでもあなた方のお役に立てれば幸いです!」
青年はそう言い残すと、後からやってくるプレイヤー達の調整を行いに、後ろの方へと向かった。
「なんかいい人だったね」
「うん、そう…だね」
ユウナの言葉に答えながらも、ハヅキはどこか腑に落ちない顔をしていた。
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