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「なっ…おい!ちょっと待てよ!」
扉の奥へと入ろうとする三人を見て声を上げたのは一番右端に並ぶプレイヤーであった。つまり、このボス部屋に最初に入る予定のグループである。
「あぁん?なんだよ?」
魔術士と思われるそのローブの男は、突っかかるように反応する。
「俺達が一番最初のグループだろ!!何勝手に入ろうとしてんだ!!」
見ると、4列目のグループの人数が7人に減っていた。つまり、あの三人組は決められた順番を無視して勝手に部屋へと入ろうとしていることになる。
「きひっっ!!おいおい、まだんなこと言ってんのかよ!!俺達は先に入りたいから先に入る、それだけだ。てめぇらはせいぜい攻略者様にもらったありがた~い書でも読んで、そこで立ち尽くしてるんだな!!」
三人組は足を止めることなく、扉の奥へと入っていってしまった。その場にいる全員、ただ呆然と彼らの動向を眺めてしまっていた。そして、ボス部屋の入り口に文字が表示される。
【クエスト人数:3/10 クエスト開始まで60s】
クエスト開始まで60s、と書かれた表示はカウントダウンを始め、それを見てプレイヤー達はようやく現状を把握する。
「おい、ずりーぞ!!俺が先だ!!!」
「なんだと!?俺達の方が先だろ!?」
「いいえ、私達のグループが1番よ!!!」
プレイヤー達は慌ててボス部屋へ入ろうとする。先程までとは打って変わって、整然とされていた列は跡形もなく崩れ去り、部屋の入り口にごった返した。
「ちょっ……落ちついて…」
「きゃっ…ちょっと…押さな……」
ハヅキとユウナはその人波に押され、身動きが取れる状態ではなかった。まるで満員電車から押し出されるように、人混みに揉まれ、何も抵抗できずに流されていく。
「っ!!」
バタッ!と、ハヅキは人混みの中から倒れるように弾き出された。
「ハヅキ、大丈夫?」
先に弾き出されていたユウナはすぐにハヅキの元へと駆け寄る。なんとかごった返した人混みから抜け出すことができ、はぁ…とため息をつきたいところであった…が。
「これで10人揃ったな?」
鼻にかかるような、嫌悪感を抱かせる声が横から耳に入る。すぐに振り向くとその声の持ち主はハヅキ達の目の前でにやりと笑みを浮かべていた。
ハヅキはすぐに理解した。同時に、すぐにユウナを連れこの場から抜け出そうとする…が、それも遅かった。
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