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そして今。その足でバイトにやって来たが、事務室には長谷川さん一人。
七瀬さんは少し前に比内さんと一緒に外出したそう。
中川さんは先日入った依頼のためにその相手方となる会社に出向いている。ネクタイの色は赤系だったそうなので、相手企業に攻撃的な何かを仕掛けに行ったのかもしれない。
俺のデスクの上にはメモがある。
七瀬さんがいない間に済ませておくべき作業リストを分かりやすく残していってくれた。
その指示に合わせてしばし動き回り、最後にノートパソコンの前に戻る。
入力作業を進めていると、コーヒーを淹れに行っていた長谷川さんが俺の分も一緒に持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「いいえー。ちょいちょい休憩しろな」
「はい」
そう言って長谷川さんもすぐにまた仕事に戻った。
もう少しすれば七瀬さんは帰ってくる。となればもう、今しかない。
「あの、長谷川さん……」
「んー」
「今ちょっとだけ話してもいいですか」
「んー?」
「……仕事中に聞いてもらうようなあれでは全然ないんですけど……」
「うーん?」
「…………今日なんか俺、告られまして」
「え、何それ待って十五秒だけ待ってて詳しく聞きたい」
突然一気に喋って物凄い勢いでパソコンをカタカタ言わせた。
本当に十五秒でバッと顔を上げると、椅子ごとシャーッと飛んできた。
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