拾われた犬

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「そーやって比内はさあ、言い方がいちいちキツイんだよキミはー。可哀想にこんなに怯えちゃって。ねえ?」 「え……」  入ってきたその男。言いながら俺の両肩をガシッと掴んだ。  顔はとてもにこやかなのにその手つきには遠慮がない。  はいはいそっち戻って戻って。呑気な口調で言われながらソファーに連れ戻されている。  ほとんど無理やりに近い形でストンと着席させられた。ふかふかとした質感のシートに腰が沈み込んでいく。 「……あの」 「ごめんねー、このおっさんの目つきが悪すぎて怖がらせちゃったね。ほら比内、キミも謝りなよ」 「うるせえ黙れ」  溜め息と共に聞こえてきたのはそんな一言。ソファーに座らされたまま横方向に顔を向けた。  ヒナイ、と呼ばれたその人は、鬱陶しそうに頬杖を付いている。  黙れと言われた当の本人は全然めげる様子もない。にこにこと俺の隣に座ってソファーの背凭れに寄りかかった。 「キミはねえ、そんなんだから方々に敵ばっかり作るんだよ。たまには愛想良くにっこり笑ってみたらどうだい。顔だけは完璧なのに表情作りが最悪なせいで台無しだ」 「うるせえっつってんだろクソが。無駄口叩いてねえで仕事しろ」 「あーあコレだよ。怖い怖い」 「あ?」  イラッとした様子で低く呟く。その声を耳にして顔を青くさせたのは俺だった。  隣のこの人はニコニコしたまま、まるで子供にするかのように俺の頭をよしよしと撫でた。
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