判決の日

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作戦成功日から数えて八日目。 私達は有鐘裁判所の玄関前に立ち、 少し離れた駐車場を眺めていた。 そこには太刀川弁護士に深々と頭を下げている、 沢渡さん家族の姿が有った。 『主文・・・、被告人は無罪。』 その声が法廷に響いたのは今から一時間ほど前。 佐和田と三反田に書かせた反省文が決め手となり。 沢渡さんは無罪判決を勝ち取ったのだ。 沢渡さんが娘さんを抱き上げて、 歩き出したのを見届けてから、 私達は太刀川弁護士の方へ向かった。 私達の気配に気付いたのか、 太刀川弁護士は私達の方に振り向いて、 「おう!御苦労様だったな。」 逆転無罪を勝ち取り、御満悦の御様子だ。 「あの二人に、  どうやって反省文を書かせたのかは判らんが、  あの家族に笑顔を取り戻す事が出来たのは、  お前達のお陰だ、  沢渡さんに代わって言うよ、  アリガトウってな。」 そう言って頭を下げる太刀川弁護士。 「我々は先生からの依頼をこなしただけです。」 守屋が淡々と答える。 それを聴いた太刀川弁護士は頭を上げ。 「そっか~、  まぁ苦労は有っただろうが、  あの幸せそうな家族の姿は、  どんな報酬も敵わない、  何よりの宝物だと言えるな!」 事情を知らない人から見れば、 極当たり前の普通の家族の姿にしか見えないだろう。 しかし、 その極当たり前の事が沢渡さん家族からは、 奪われていたのだ。 それを知っている私には、 あの家族の姿がとても尊く、 そして素晴らしく輝いて見える。 「じゃあな、通りすがりの正義の味方達!」 そう言って右手を挙げて、 太刀川弁護士は私達に背を向けて歩き出す。 「待て~ぇい!」 守屋が太刀川弁護士の肩を掴む。 「何だよ~!  アタシの決め台詞で締めて、  エンドロールで良いじゃん!」 「そうは行きませんよ!  まだ報酬を頂いてませんからね~。」 あ、そうだった! 報酬の20万円を貰って無かった・・・。 踏み倒される所だった! 「・・・。  そう言う風に金金言ってると、  ろくな大人になんないぞ。」 そう言いながら太刀川弁護士は、 鞄に手を入れ封筒を取り出し、 守屋に差し出した。 「・・・ほら。」 しかし守屋は封筒をじっと見つめたままだ。 「どうした?要らないのか?」
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