判決の日

4/4
前へ
/37ページ
次へ
摩子はリュックからあの名刺を取り出して、 太刀川弁護士に渡す。 「荒北摩子です。」 太刀川弁護士はその名刺を見ながら、 「おい守屋~!」 と守屋を睨む。 「いやいや、  それは摩子が勝手に作ったんですよ!」 首を振りながら後退りする守屋。 「本当か~?」 「本当です!」 「そっか~、なら良いや。  んじゃアタシも名刺をやらないとな。  大人は名刺交換するもんだし。」 と言いながら太刀川弁護士は、 鞄から名刺を取り出して摩子に渡す。 「ありがとーです!」 ニコニコしながらそれを受け取る摩子。 「荒北のおかげでもう一稼ぎ出来そうだ!  んじゃまたな~!」 片手を挙げ走り出す太刀川弁護士。 「センセ~!またね~!」 と言って手を振る摩子。 私も手を振り背中を見送った。 「しかし・・・、  どうするつもりなんだ奴は。  あの反省文で、  痴漢が狂言であった事を、  自らの手で証明してしまったのに・・・。」 守屋はそう言って考え込んでいる。 「まぁ、とりあえずは私達も帰りましょ。  ここで考えててもしょうが無いわ。」 先輩がそう言って歩き出したので、 私達もそれに付いて行く。 守屋がまだ考え込んでいるようなので、 「守屋~、  報酬貰うよりも、  偽造のコピー返して貰った方が、  良かったんじゃない?」 と、からかうつもりで言ってみた。 「ああっ!」 守屋は重大な事に気付いたように、 血相を変えて走り出した! 「あ~!  報酬分けなさ~い!」 先輩がその後を追い掛ける! 私達も慌てて追い掛ける! 守屋が太刀川弁護士に追い付くか! 私達が守屋に追い付くか! 私の迂闊な一言で、 思わぬ鬼ごっこがスタートした!
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加