ハイデル騎士団の休暇

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ハイデル騎士団の休暇

ハイデル騎士団団長ムティッツィアノ・モートン…ムトは、憂鬱だった。 自分でもこんなに憂鬱なのが信じられなかった。 「ぴりぴりしてるな…お前がそんなに入れ込むとはな」 同じくハイデル騎士団員のスティルグレイ・アダモント…スティンが笑ってそう言う。 今日、暁の日は、ミナの護衛であるハイデル騎士団全員が休みだ。 これが週末まで続く…(かえ)って気が休まらないとはどういうことか。 「まあ、ミナとはずっと一緒だったからな、落ち着かなくて当然だが…。そうだ、気晴らしに、どこかに泊まりに行かないか。せっかくの長期休暇なんだし」 とは言え、ザパムゼはもう行ったからなあ、と言いながら、スティンはムトの前の席に座った。 「ほかのやつらはどうしてる?」 ムトがほかの団員のことを聞くと、スティンは、ん?と少し首を傾けた。 「今朝も普通に鍛練してたぞ。アニースは来てなかったが」 「やあ、おはよう。陰気な顔してるな。ほかのやつらは?まだ鍛練か?」 その時ちょうど、ハイデル騎士団員である女騎士、アニーステラ・キャル…アニースがそう言いながら近付いてきた。 今は7時。 食堂は込み始めていて、ざわめきが大きい。 「私の席、取っといてくれ。愚痴はあとで聞いてやる」 そう笑って言って、アニースは配膳の列に並んだ。 「そんなに顔に出てるか?」 「不機嫌そうな顔してよく言う。それとも毎日鍛練するか。騎士に長期間休めとは堕落しろと言ってるも同然だぞ…ああ、来た」 食堂出入り口を見ると、ハイデル騎士団員が揃って顔を出した。 ファロウル・シア・スーン…ファルと、シェイディク・カミナ・レント…シェイドは、自宅に戻っているのでいない。 スティンは彼らに軽く手を上げ、ざっと自分とムトが挟む机を見た。 長机なのだが、半分ほどは埋まっていて、全員は座れそうにない。 考えながらムトが言った。 「…いい案かもしれない。巡視に出る前、ほかの騎士たちが手合わせを申し出てきたろう。需要はあるはずだ。毎日大鍛練場の一部を借りて、鍛練に来たやつを捕まえるんだ」 「おいおい、どんな罠だよ…でも面白そうだ」 ムトは一気に気分を盛り上げた。 「なんだ、悪戯を思い付いたような顔だな」 アニースが来て、ムトの隣に座る。 スティンが笑いながら答えた。
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