水の側宮の奮起

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水の側宮の奮起

「じゃあ、行ってくるよ。帰ったら試験訓練、頑張ろう」 彩石選別師資格。 一度は取ったそれを、サリ・ハラ・ユヅリとカィンは、来週末取り直す約束をした。 彼らが試験に受かったあと、大幅に資格基準が変わったのだ。 そのため、試験に受かるには訓練が必要となり、ふたりはその訓練を一緒に行うことにした。 これまでは、サリが新たな仕事に追われて余裕がなかったが、未だにその書類仕事は多いものの、なんとかこなせていると言えるまでになった。 それを見て、カィンが、そろそろ自分たちも選別師資格を取り直そう、と言ったのだ。 もちろん、カィンがユーカリノ区から帰ってからになるので、今週末の藁(こう)の日から始める。 サリは、楽しみだった。 カィンと長い時を一緒に過ごせる。 訓練だから真面目に取り組まなくてはならないが、それでもやはり、緩む頬を改めるのは難しかった。 「嬉しそうですね、サリ」 側宮(そばみや)護衛団の女騎士、リザウェラ・マーライトに言われて、サリは、手に持っていた書類を執務机に置き、自分の頬に両手をあてた。 「そそそそんなに判りやすかったでしょうかっ、いえ、不真面目ですわねっ、気持ちを切り替えますわ!」 リザウェラはサリが浮かれている理由を知っていたので、ふふふと笑う。 しかしこちらも事情を知っている側宮護衛団のスエイド…マゼラスエイド・サーゴイルは複雑な表情だ。 カィンに不満があるわけではないが、とにかく複雑な気持ちなのだ。 サリに代わって書類作りをする手に、つい力が入ってしまう。 ここは王城の側宮執務室。 現在使っているのは、実の姉である水の宮公カリ・エネ・ユヅリを助けるための役職、水の側宮に就いているサリだ。 そしてサリを危険から護り、こうして書類仕事の手伝いもするのが、側宮護衛団である騎士たち。 隣室はその側宮護衛団の居室になっていて、カーライト・ヘルイスト…カルと、マラート・クウェメント、ハロルディン・ノーストリオ…ハルと、メイニオ・カロナイアたち護衛団の面々が、やはりサリが処理すべき書類の山と戦っている。 「まあ、仕事ができていればいいですけど、心ここにあらずなようなので…お仕事しましょう?」 「ごごごごめんなさいっ、頑張りますわ!」 そう言って、赤い顔をそのままに、真面目に書類に向き合うその姿はかわいらしくて笑みを誘う。 今日は暁の日。 週の始めの日だ。
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