水の側宮の奮起

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サリは今から週末が楽しみで仕方ないが、リザウェラに言われた通り、仕事を(おろそ)かにしてはいけない。 向き直った書類を読んでみると、ユーカリノ区チュウリ川の水量増加についての調査依頼のようだった。 サリはすぐさま署名して、水の側宮付き調査官の派遣を指示した。 他にも、ボナ川から造船所付近の水流異常調査依頼、王城内汚水処理用サイセキの交換依頼、黒檀塔に保管してある水の彩石の完全体、不完全体選別の経過報告、各調査の経過報告、律法部に保管してある水の彩石の完全体、不完全体の選別依頼、ボルーネ区フルッセル川の水質悪化調査及び浄化依頼、フェスジョア区ライカ川源流取水口増設時の水質保全依頼。 読んで、署名、指示。 そうして順調に進めていたところ、不意に左隣の部屋…側宮護衛団居室に続く扉が叩かれて、集中していたサリは、はっと顔を上げた。 「サリ、アークからの命令書だ」 ハルは、自分たちでできる仕事、サリが急がなければならない仕事など、書類選別をしていた。 サリはやや緊張の面持ちで書類を受け取った。 「聞いていますわ。黒檀塔の修練室のことですわね。四の宮公のご都合を確認してください。それによってこちらも時間を空けて、協議に参加させていただきます」 修練室とは、異能の制御のために使う部屋だ。 そこには、異能が制御不能になっても対処できるよう、周囲を保護する術をかけなければならない。 それを命令する書類だ。 今回構築する保護の術は、4種の異能の部屋が隣り合うので、保護に使う術語を合わせ、ひとつの結界として強固な区画を造り上げようということになっている。 そのために、四の宮で都合をつけ、まずは協議の時間を作らなければならない。 そしてサリも、この協議に参加する。 カリの代わりに保護の術を構築する役目を言い渡されたからだ。 サリは前回、レシェルス区で、結界構築こそ成ったものの、ミナに助けてもらい、カリを失望させたと思っていた。 今度こそ、自分ひとりの力でやり遂げなければ。 肩に力の入るサリを微笑んで見つめて、リザウェラは言った。 「私たちで何かできることはありませんか?」 「えっ」 リザウェラは続けた。 「その件でカリ様に指示を受けておられるのでは?そのようなお顔です」 サリは右の頬を押さえて、そんなに判りやすいですかっ、と言った。
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