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「まあ…、そうですね。サリはいつでも懸命にやり遂げようとするから。それだけの緊張感はどうしたって面に出ます。でも、たまには失敗してもいいんですよ。やり直す、ということが、大抵はできますからね」
サリにはとても信じられなかった。
失敗してもいいだなんて。
「むしろ失敗しなければ学べないこともありますから。そう悪いことでもないんです」
続けてリザウェラは、それで、と言った。
「具体的には何をするんです?」
サリは不安そうな顔でリザウェラを見た。
「修練室の保護をするんですわ。ほかに被害が及ぶのを防ぐのです。騎士の方々は強い力をお持ちとかで、特に強固な術が必要なのですわ」
ミナが以前話したところによれば、一般の者は1000から100000カロン、騎士は1000000から6000000カロンの力量を有している。
もちろん、四の宮に特に大きな力量の者が来ないとは言えないのだが、仮に壊されても他の宮がある。
だが、たったひとつの黒檀塔を、王城を守る砦を、異能の制御不能により内側から破壊するわけにはいかないのだ。
「術語は既に決まっているのですか?」
サリは首を横に振った。
「まだですわ。それも今度の協議で決めますの」
リザウェラは、うーん、と言って、天井を見上げた。
「そうだ。一度黒檀塔に来られませんか?鍛練場ではなく、中を案内しますよ」
サリは、ぱちぱちと目を瞬いた。
「黒檀塔を…ですか?」
リザウェラは笑って頷いた。
「今までは町を見て結界修復、構築の助けとしていたでしょう。今回は黒檀塔内のことですから、黒檀塔を見てみてはどうかと思うんですが…どうです?」
サリは想像してみた。
黒檀塔…そこに住む騎士たち。
そこにはどんな光景があるのだろう?
「わたくし…行ってみたいですわ!」
リザウェラはにっこり笑った。
「ついでに食事もしていきませんか。帰りは送ります。今日は何か予定が?」
サリは急いで記憶を探った。
大丈夫、何もない。
「わたくし、行けますわ!」
元気な声に、リザウェラは笑みを広げた。
「では今日、仕事が終わったら、鍛練は休んで黒檀塔を回りましょう」
「楽しみですわ!」
盛り上がる2人を交互に見て、ハルとスエイドは顔を見合わせ、そしてまた、サリとリザウェラに目をやるのだった。
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