祭王の仕事

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「だから調べるんですね…あ、土は、火を避けて木を移動させることもできますね。家ももしあったら、一緒に移動させて…黒土石は火山に近い所にあるから、持ってくるのは無理かな…」 ルークは目を丸くした。 「カザフィスには黒土石の溜まり場もあるの!?」 「えっ?いえ、ありませんよ。普通に火山区に出現している黒土石のことです」 「なんだ、勘違いしちゃった…いや待って、そんなに黒土石多いの?」 ミナは頷いた。 「アルシュファイドほどではありませんが、カザフィスの火山区…ひとが立ち入れないところですが、そちらは彩石が多いです」 そうなんだ、とルークは呟いた。 「そこにあるのに利用できなかったら、つらいね…」 ミナは仕方なさそうに笑った。 「歯がゆいです。でも、私なんかはそれが自分の限界ですから、仕方ない」 ルークは、意味が解らず、ミナを見て、え?と言った。 ミナはにこりと笑った。 「私は力量が小さいですから、たいていの彩石は、あっても使えないんですよ」 「あっ、そっか…」 彩石の溢れる国で、それはどんなにか苦しいことだろうかとルークは思った。 「でも今は、私じゃなくても、使える人がたくさんいるから。それもあって、つい採石に力が入っちゃうんですよね…」 そう言ってミナは笑った。 やがて3人は禁書庫に着き、それぞれ資料を探す。 ルークは言った通り、火事を防ぐ、あるいは抑える術を求めて禁書庫を歩いた。 それはすぐに見付かり、まずは土の資料から、近くの机に持っていって広げる。 探すのは、結界と、土の移動、変形といった術だ。 効果が一定条件…この場合、火事が起こったときだ…を、満たしたときに発動する術は、基本的にサイセキがないと保持出来ない。 土のサイセキがないのなら、無駄になるかもしれなかったが、ルークは自分が直接携われるかもしれない、ということに、これ以上ない魅力を感じていた。 アルシュファイド王国の絶縁結界を保つのも大事な仕事だ。 だがルークは、アークと同じ時に、同じことを見ていたかった。 口出ししたいわけではない。 心配しているわけでもない。 ただ、同じことを見て、感じたいだけなのだ。 そんな思いを抱えながら目次を見ていくと、火避けの術、というものがあった。 目を見張り、急いで頁を()る。 見るとそれらは、家々と、森林を護るために作られた術語だった。
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