祭王の仕事

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「やろうと思えばできることですもん、 考えて当然です。カザフィスのひとは土の者が多いですから、分担して事前の術を掛けて回ることが可能かもしれません。自分用でも、術語を考えること自体は、無駄にはならないと思いますよ」 ルークの表情が、ぱあっと明るくなった。 「そうかなっ」 ミナは頷いた。 「はい。火災対応でなくとも、これから、彩石の必要なく自分たちの力を使うようになったら、術語は重みを持つのかもしれません。異能は祭王の領分ですよね?それなら、術語の開発も祭王の領分ではないでしょうか」 ミナは身を起こし、考えながら言う。 「あらかじめ、使われる状況を予測して、術を考える。それって、今後すごく重要なことになりそうです」 ルークはミナを見上げた。 ミナは口元に手をやり、考えに沈み込むようだった。 「力の制御の仕方を教えるならば、その使用法も教えられるほどでなければ、異能を使った犯罪に対処できない」 ミナはルークを見た。 「ルーク、術語の開発、あるいは見直しは、急務かもしれません…」 「えっ?」 ミナは言った。 「異能をよいことに使う人ばかりではない。それに対応して、律法部や騎士たちは、より高度な術の使い方を学ばなければなりません。それには、力の制御だけではきっと足りない。力を、もっと効果的に使える、術語が必要になってくるはず」 ルークはその言葉の意味を考えた。 術語の開発、見直し…それは確かに、祭王の領分と言えた。 異能は、祭王の領分なのだから。 けれど。 アークの役に立てる。 何よりもまずルークが思ったのは、そのことだった。 「僕…僕、今が動くとき、なのかな」 ミナは、はっとしたように頬を朱に染めた。 「ごっ、ごめんなさい、私、差し出たことを言いました…」 ルークは首を横に振って立ち上がった。 「ううん、それは必要なことだ。君は、君のすべきことをした。この先が、僕の仕事」 ルークは唇を引き結んで、顔を上げた。 ようやく自分の仕事が始まるのだという、気持ちがした。
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