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そう言われ、ジョージイはがっかりしたようにうなだれた。
「ああ…彩石判定師に来てもらえるような理由がないな…」
そのあまりの落ち込みように、ミナは笑って、それから思い付いた。
「何か大きな術を使うようなら、私、誘導できるかもしれません…たぶん、結界とか、空間の指定になると思いますが」
「空間の指定?」
「はい。術語がしっかりしていれば、そんなことも可能みたいですから」
ジョージイはうまく思い描けなかったようで、首を捻った。
ミナは少し寂しそうに笑った。
「ほかのひとは術語に従う力の流れが見えないみたいなんです。例えば、ジョージイ様に伝達を届けるとき、私は細い糸一本で届けますけど、ほかのひとはひどくぼんやりした力で届けています」
「ぼんやり?」
「ええ。線のない、力の帯が流れてる。行き着く先は同じですが、私は目的地を見据えて、ほかのひとは術語に任せて運んでるんです。そうですね…、川の流れに乗る船のようなものです。私の船には操舵手がいて、川の流れを読んで要領よく進むけど、ほかの船は流されるまま、川の行き着く場所に出るんです」
ジョージイは首を傾げて言った。
「私が伝達をするときは、相手を特定したが…」
ミナは、ああ、と頷いて言った。
「私がしているのが、それです。明確に相手と居場所を特定する。術語を使うと、直接知らない相手や、その居場所を自分で特定する手間がないんです。そこを私は、術語が向かう先を読んで、相手や居場所を割り出すんですね」
「…と、すると…私も、術語を使えば、あそこまで厳密に相手を探し当てなくてもいいのか」
ジョージイが考えながら言い、ミナは解ってもらえたようなので、笑顔で頷いた。
「そうです。ただ、向かった先のことが判らないので、伝える手段が特定できません。例えば、土を伝って木から声を届ける術語の場合、最も相手の近くにある木は、すぐ側ではないかもしれない」
「それだと、気付いてもらえないかもしれないな」
「そうですね。でも、相手が森のなかにいるのなら、最も近い木が伝えてくれるから、その点、ボルファルカルトルでは不自由しないかもしれません」
ジョージイは頷いて、にこりと笑った。
「それは、役に立つ方法を教えてもらったな」
ミナもにこりと笑って応えた。
ジエナが考えながら尋ねた。
「空間の指定とは、具体的には?」
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