政王の予定

3/4
前へ
/266ページ
次へ
「先日は、4部屋を指定して、その前は、セファレの林縁(りんえん)を境界線として指定しました」 「セファレの林が途切れるところまで、か…、屋外でも、同じ種類の木を植えることで、境界にできるのだな」 「そうみたいです。その場合も、術者はセファレの林縁がどこか判っていませんでしたが、術語がはっきりとその位置を捉えたので、私には指定することが出来ました。ですが林は、長い年月を保つのは難しいと思われます」 「そうか…そうだな…」 「それよりは、名のあるサイセキを用いる方が、判りやすいので保ちやすいし、境界線ははっきりします。ただその場合、サイセキ同士を繋ぐ線は直線になります」 ミナはそう言って、少し首を傾げた。 「林を保つのは難しいですけど、ひとときでも術の影響範囲を自由に設定できるのなら、作る価値はあるのかもしれませんね…」 そうだなと頷いて、ジエナはちらりとアークを見た。 その表情はやや硬い。 ミナが大掛かりな術で、誘導による術の安定が出来ることは、ミナの利用価値と、狙われる危険を高めることになる。 心配せずにはいられないのだろう。 実際、アークは心配していた。 術の構築をミナに手伝わせることで、彼女の能力を測ったのはアークだ。 把握することを必要と感じたためだったが、それは利用することを考えてのことでもあった。 そんな勝手な都合に、彼女はいつまで付き合ってくれるのだろうか、と考えていた。 「まあ、そんな用事なしでも観光で行けたらいいですねえ、数十年あとになると思いますけど」 「数十年か…」 ジョージイが溜め息と共に呟き、ミナは、あははと笑った。 「それでも行けるだけいいですよ。それまでどの国も平和だといいですね」 ジエナが、頷いて言った。 「そうだな…取り組みがうまくいけば、成果が出るのはそのくらいになるだろうな。ミナが来るまでに、整えておこう」 ミナは両手を合わせた。 「わあ、楽しみですね!」 「俺の方は、そんなに時間はかけられないな。ただ招待するというのではいけないか?」 ミナは驚いて、両手を胸の前で振った。 「そんな、招待されるような者ではないですから!」 「受けてくれないのか?」 気落ちした様子のジョージイに心動かされ、ミナは、ええっと、と言葉を探した。 「そっ、そんなに大仰(おおぎょう)でないのならいいかなあっ。王宮とかでなく宿に泊まるとかっ」
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加