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「先日は、4部屋を指定して、その前は、セファレの林縁を境界線として指定しました」
「セファレの林が途切れるところまで、か…、屋外でも、同じ種類の木を植えることで、境界にできるのだな」
「そうみたいです。その場合も、術者はセファレの林縁がどこか判っていませんでしたが、術語がはっきりとその位置を捉えたので、私には指定することが出来ました。ですが林は、長い年月を保つのは難しいと思われます」
「そうか…そうだな…」
「それよりは、名のあるサイセキを用いる方が、判りやすいので保ちやすいし、境界線ははっきりします。ただその場合、サイセキ同士を繋ぐ線は直線になります」
ミナはそう言って、少し首を傾げた。
「林を保つのは難しいですけど、ひとときでも術の影響範囲を自由に設定できるのなら、作る価値はあるのかもしれませんね…」
そうだなと頷いて、ジエナはちらりとアークを見た。
その表情はやや硬い。
ミナが大掛かりな術で、誘導による術の安定が出来ることは、ミナの利用価値と、狙われる危険を高めることになる。
心配せずにはいられないのだろう。
実際、アークは心配していた。
術の構築をミナに手伝わせることで、彼女の能力を測ったのはアークだ。
把握することを必要と感じたためだったが、それは利用することを考えてのことでもあった。
そんな勝手な都合に、彼女はいつまで付き合ってくれるのだろうか、と考えていた。
「まあ、そんな用事なしでも観光で行けたらいいですねえ、数十年あとになると思いますけど」
「数十年か…」
ジョージイが溜め息と共に呟き、ミナは、あははと笑った。
「それでも行けるだけいいですよ。それまでどの国も平和だといいですね」
ジエナが、頷いて言った。
「そうだな…取り組みがうまくいけば、成果が出るのはそのくらいになるだろうな。ミナが来るまでに、整えておこう」
ミナは両手を合わせた。
「わあ、楽しみですね!」
「俺の方は、そんなに時間はかけられないな。ただ招待するというのではいけないか?」
ミナは驚いて、両手を胸の前で振った。
「そんな、招待されるような者ではないですから!」
「受けてくれないのか?」
気落ちした様子のジョージイに心動かされ、ミナは、ええっと、と言葉を探した。
「そっ、そんなに大仰でないのならいいかなあっ。王宮とかでなく宿に泊まるとかっ」
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