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ジョージイは首を傾けた。
「王宮ではいけないか?」
「ミナは格式張ったものが苦手なんだよ」
ジエナの言葉に、ジョージイは逆側に、また首を傾けた。
「式典でもないのに格式張る必要があるのか?」
「俺たちにとっての普段の所作は、ミナにとってのそれではないのさ」
「ふうん?」
ジョージイは理解できなかったようだが、それ以上王宮に来いとは言わず、ではよい宿でも見付けておこう、と言った。
「そうだ。明日は最後だし、ミナも一緒に来ないか。退屈か?」
「えっ、と、ああ、行けますよ。お邪魔でなければ…でもふた手に分かれるんですよね?」
「ああ。私は木工師たちが住むところを見るんだ。そのあとボナ川に行く」
「じゃあボナ川で待ち合わせしましょうか?」
「そうだな!デュッカも来るか?」
「無論だ。護衛は要らない」
アークは何か言いたげだったが、堪えて、分かりましたと言った。
ミナが、ふと言った。
「アーク様も来られませんか。お忙しいですか?」
今日も出掛ける予定だったのだが、昼から会議が入ったので、取り止めたのだ。
アークは不意のことで返答に詰まった。
ミナと遊びに行きたいという気持ちはあったが、国王として他国の要人に見せていい姿ではないだろう。
ジエナとは共に遊び歩いたりもしたが、彼とはそういう付き合いだからだ。
ジョージイに好感を持ってはいたが、互いに一歩引いているので、ジョージイにとっては自分がいない方が楽しめるのではないかと思われた。
だがジョージイはそうは思わなかったようで、笑顔でアークを見た。
「それはいい!アーク様も来られませんか」
「わたくし…」
そのとき、シィンと話していたユラ-カグナが言った。
「ファイナを呼ぶから行ってこい。もてなそうと思わなくていい」
ジョージイを見ると、にこりと笑ってアークを見た。
その笑顔に押されるように、アークは言った。
「わたくし、ええ、行きます」
そうして、少女らしい恥じらいを含む笑みを見せた。
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