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政王の役目
円の日の朝、アークたちは、黒檀塔の桟橋から船に乗って、レテ湖の西岸に向かった。
まずはジョージイ、ジエナ、シィン、ユーイ、グレゴールが造船所付近で降り、アーク、ファイナ、ミナ、デュッカがボナ川の桟橋に降りた。
工場を回るには早い時間で、アークたち4人はひとまず、朝早くから開いている喫茶店で豆茶や葉茶を頼み、屋外の机を囲んで座った。
無料配布のボナ川工場群の案内図を手に入れ、まずはどこから回ろうかと話し合う。
「…端から順に見て回りたいわ!ジョージイ様が来られたら、繊維工場群に行きましょ」
上機嫌でアークが言い、ミナが答えた。
「ええ、そうしましょう。アークはこちら初めてじゃないんですよね」
「伯母さまと視察に来てざっと見たわ。遊びに来るのは初めてよ」
伯母とは、先代政王のことだ。
「ざっと…硝子が作られるところとか?」
「そういうのは後ろの工場群で見たわ。個人で抱えてる工場は外から覗いたぐらいよ」
そう言いながらアークは、ボナ川沿いの工場の列の奥にある工場群を示した。
「じゃあ、その個人で抱えている工場に行ってみましょう。私、硝子が作られているところを見たいんです。ここの説明を見ると、製造工程が見られるみたいですから」
「そうね!きっと大量生産の工程とは違うのだろうし」
そういうことで、最初はボナ川沿いにある個人所有の硝子工場へ行くことになった。
それぞれの工場が開く頃、一同は飲み物の器を片付けて向かう。
「ファイナも視察だけ?」
ミナが聞いて、ファイナはそちらを見た。
「ああ、こちらに来るような機会はなかったな。視察で来るまで、こんな所があることも知らなかった」
「レグノリアにいてもそんなものなんだ」
「俺はメノウ出身だし、アルシュファイドに来てからは鍛練に明け暮れていたからな」
「やっぱり騎士は休みの日でも鍛練なんだ…」
以前、そのようなことを聞いたのだ。
「さあ、俺はほかにすることがなかったからだけど、ほかの騎士見習いたちは、町に出掛けるぐらいはしていたようだ」
「見習い?」
ミナは首を傾げたが、すぐに気付いた。
「あ、そっか。その歳なら周りは見習いだったはずだね」
「彩石騎士になってからはアルがあちこち連れ回してくれたけど、ここまでは来なかった」
「私もサリたちと出掛けたけど、遠出するようになったのはミナが来てからね」
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