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白剱騎士の仕事
ルゥシィン・ヴィーレンツァリオ。
銀を含む白髪に、深い紅色の瞳。
初代白剱騎士と同じ色彩を持つ彼、シィンは、今日も黒檀塔から王城への渡り廊下を通る。
ここ、アルシュファイド王国には2人の王がいて、そのひとり、政王アークシエラ・ローグ・レグナ…アークと共に書類仕事をこなすのが彼の日課だ。
今日、暁(ぎょう)の日は、そこに要人の出迎えという予定が組み込まれている。
アルシュファイド王国は豊かな国だ。
大陸のほぼ中央に位置しながら、南北に走るふたつの峻厳な連峰が、隣国の侵略を退けていて平和が続く。
農地はさして広くはないが、限られたなかで発展した産業と、この地に多い稀少資源が国を支え、国民の生活を潤している。
特に南部に位置するここ、王都レグノリアでは交易が盛んだ。
大陸最大のレテ湖は、各国からの商船を招き、取引を盛んにしている。
それを利用しようとしているのが、東連峰の向こうにある国のひとつ、イファハ王国の王弟にして外務大臣であるクリセイド・アシィカだ。
その彼を出迎えるのがシィンの今日の仕事のひとつであるため、早いうちに急ぎの書類を各方面へ向けて通さなければならない。
シィンは王城の北棟に渡って、彩石騎士居室の扉を開け、正面奥の執務机に載る書類を確認する。
ひとりで捌ききれる量ではないが、幸い、現在の彩石騎士は、シィンのほかに4人いる。
赤璋騎士アルペジオ・ルーペン…アル。
緑鉉騎士ファイナ・ウォリス・ザカィア・リル・ウェズラ。
緑棠騎士スー・ローゼルスタイン。
碧巌騎士カィン・ロルト・クル・セスティオ。
平時においては書類仕事に明け暮れる彼らだが、有事においては政王の代わりを務める。
その膨大な力量の異能を駆使し、国を守る剣となるのだ。
異能とは、この大陸の誰もが持つ、土、風、水、火の力を発する能力のことで、人々はこれを、それぞれの分量で有する。
なかでもアルシュファイド王国の双王と彩石騎士、そして四の宮公は、代々大陸最大級の能力保持者と囁かれている。
根拠となるのは、双王の1人、祭王ルシェルト・クィン・レグナ…ルークが維持するアルシュファイド王国の絶縁結界だ。
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