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土の宮公の心懸かり
王都レグノリアには表神殿と呼ばれる場所があり、その敷地内には尖塔と、土の宮、風の宮、水の宮、火の宮という建物がある。
尖塔は国を覆う絶縁結界の楔を打つ、結界の要所。
土、風、水、火の四の宮は、異能を判別し、各異能の使用法を人々に指導し、異能に関する相談を受ける場所だ。
四の宮を預かる者は、それぞれ、膨大な土、風、水、火の力を1種ずつ持つ。
彼ら四の宮公は、アルシュファイド王国の各地で起こる異変や災害に対するため、代々その異能を行使してきた。
土の宮公であれば、土の異能を使って、問題を解決するために動く。
数ヵ月前、祭王ルークの維持する絶縁結界の不備に対処すべく、土の宮公ロアセッラ・バハラスティーユ・クル・セスティオ…ロアは、連峰の手前に土の力による壁状結界を建てた。
これにより、土の宮は今後、国を守る二重結界のひとつを、代々担う役目を負った。
過ぎた荷物かもしれない、と思うこともある。
だがそれを、助けてくれる手があった。
「伯父さん、行ってきます」
甥であるカィンの声に、ロアは物思いから我に返った。
ゆったりと笑みを浮かべて甥の頭に手を置く。
「気を付けてな」
「はい」
今日から5日間、カィンは、ミナと共に、今いるレグノリア区の北隣にある採石地区、ユーカリノ区に滞在する予定だ。
ユーカリノ区には彩石の泉とも呼ばれる採石場が複数あり、カィンとミナは、この国を守る二重結界に使う結界石を採取しに行くのだ。
細かく言えば、ミナが結界石を見分けて指示し、カィンとそのほかの者たちが指定された結界石を運ぶ。
結界石の条件は、正しい力量であること。
そして、完全体であること。
このふたつの見極めをすることで、結界は正しく機能し、堅固な造りになるのだ。
それによって、より長く結界を維持できる。
頻繁に不具合を確かめたり、結界石の入れ替えを行わずに済むので、結界維持者の負担が軽減するのだ。
だが、この正しい力量と完全体の見分けは、今のところミナにしか出来ない。
正しい力量とは、数で表せない、伝えられない力量だ。
完全体とは、きっちりカロンで力量を量れる彩石で、量れない彩石を不完全体と呼ぶ。
本来、彩石判定師とは、彩石の完全体と不完全体を見分けるだけの役職だ。
それを、使い勝手が良いからと、あらゆる面で利用していることに、ロアは心苦しさを覚える。
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