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今回の採石にしても、ある程度絞り込んだ彩石の中から、完全体と不完全体の判定だけしてもらうことも出来るのだ。
それを、ミナに選別させることで、余計な採石をする手間を省いている。
確かに無駄はなくなるのだが、ミナにはほかにもしてもらいたいことが山ほどある…こちらの勝手な都合ではあるが。
もちろん、ミナの手を借りなくて済むよう、努力はしている。
彩石選別師育成などがそうだ。
彩石選別師は、彩石を、属性と働き、そして最小1カロンから選別する。
これまで、彼らの言う1カロンとは、1カロン以上2カロン未満だったが、訓練して、1カロンはきっかり1カロンの完全体、1カロン以上2カロン未満は不完全体、と、分けられるようにするのだ。
この取り組みは、今のところ順調だ。
土の宮でも選別師の技術修得を手伝っている。
ロアは自宅を出て土の宮に向かった。
歩いても、通用門から入ってすぐだ。
裏扉から屋内に入って、土の宮の一切を取り仕切るエリカ・ミノトや事務室長らに挨拶する。
そうして、謁見の間をぐるりと回って書斎に入った。
書類仕事は山積みなのだが、ミナのことを思うと、他に何かできることはないかと思ってしまう。
ロアは、ざっと土の宮の処理すべき書類を確認してから、風の宮の書類を見る。
デュッカは今回もミナの採石に同行するのだろう。
風の宮は代々、宮に居着かない。
だが場所は問題ではないのだ。
ただ彼らには、留まる理由がない。
ミナは自分がその理由…デュッカの留まる理由になってしまったことに気付いていないのか。
気付きたくないのか。
ロアには、どうも後者のような気がしてならない。
息を吐いて、自分の名で処理できる風の宮の書類に目を通す。
宮を継ぐ者がいない場合に備え、四の宮の誰かが署名すれば通る書類が多い。
風の宮の不在中は、それを利用して他の宮が面倒を見ているのだ。
土の宮は謁見希望者が少なく、水の宮、火の宮よりも手が空いているため、ロアは進んでこれを引き受けた。
デュッカとは長い付き合いだ。
なるべくなら想う者と結ばれてほしいものだ。
そんなことを考えながら、風の宮の書類を片付け、土の宮の書類を片付けていて、1枚の依頼書に目を留めた。
それは土の宮付き調査官からの依頼で、ユーカリノ区のある地域で、地面が盛り上がる状態が続いているのだという。
民家に近く、規模が大きいため、付近の住民が脅えているとのことだった。
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