土の宮公の心懸かり

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『未だに隆起し続け、原因は不明です。変化が早く、危険なため、警備隊も呼びましたが、現在の対処では追いつきません。お忙しいことは重々承知しておりますが、お越しいただきたく存じます』 基本的に、問題の原因が判らなくても、その区の警備隊が対処する。 土の宮の手を必要とするのなら、その警備隊の手に余る、ということだ。 自分が行ってもいいが、ちょうどカィンが向かっている。 採石は遅れるが、様子を見るだけでも行かせたいところだ。 ロアはそのように書き、土の宮で雇っている伝達師に王城への伝達を頼んだ。 アークの了承を得て、そちらからカィンに命令を発してもらうためだ。 地面が隆起するということは、制御のできていない未熟な土の者がいるのかもしれない。 しかし原因が判らないということは、人は調べたのだろう。 もっと詳しく調べる必要があるのかもしれない。 つまり、異能判別のし直しだ。 アルシュファイド王国内であれば、赤ん坊の頃、そうでなくとも早い時期に、判別は済んでいるのだろうが、その時に能力がなく、長じてから発現した、または何らかの理由で判別の際に発動が弱いか、発動しなかったのかもしれない。 調査官は判別結果の聞き取りはできても、住民全員の判別し直しまでは手が回らないだろう。 ロアは判別し直しをしたかどうか尋ね、影響範囲と思われる住民の数を確認する伝達を送り、土の宮の者に判別のための土のサイジャクを用意するよう伝えた。 はたして、カィンはこの件をどう考え、どう処理するのか。 ロアは楽しみでもあり、解決できなかった時のカィンの落胆を心配した。 同時に、別の理由があることも考え、ロアは急ぎ、土の宮が過去に手掛けた事件の資料を見直し始めた。
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