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賢一の声を聞いた理美が玄関まで出迎えた。
彼女は賢一の姿を認めて柔らかな表情に
なる。
「おかえりなさい。」
ああ、そうだ、この声だ。彼女のやや低い
澄んだ声を聞くと賢一は安堵し緊張が
ほぐれてゆく。あの頃からそうだった。
理美と過ごすのに自分を取り繕う必要は
ない。己の感情に逆らうことなく、いつ
でも素の自分でいられた。
家に上がるなり賢一は理美の背に両腕を
回した。
「どうしたの。」
自分を見上げた理美と視線が合った。
「精進落とし。」
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