終章

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   その後、百美人殺人事件に便乗し、行方知らずの娘を巡ってひと悶着が起きていた。被害に遭った娘たちに支払われた見舞金を目当てに、不正行為を働こうとした不届きな輩が現れたのだ。だが、直接手にかけた公業本人が娘たちの人数や名前を把握していたので、大事になる前に騒動は収まったようだ。 「この期に及んで悪事を働く卑しき者が現れるとは、情けない話ですわね」  嘆く華子を父・聡一は軽くあしらった。 「森園子爵の言葉じゃないが、人っていうのは強欲な生き物なんだよ。大昔からいさかいごとの発端は金か色恋沙汰と、相場が決まっているからなぁ。善人ばかりの世の中だったら、警察なんぞ必要ないだろう?」  一時は安斎姉弟から父の敵と思われていた聡一だが、決して悪事に手を染めるような男でないと華子は確信している。 「良かったですわね、お父様の疑いも無事に晴れて」 「あぁ、これも一座のみんなや麗治郎君のお蔭だよ」  己の容姿に劣等感を抱いていた森園公業による凶行と片づけてしまえばそれまでだが、彼が抱えていた闇は誰の心にも潜んでいるのかもしれない。  かくして若くて美しい娘たちが死という手段をもって、その美貌を永遠に封印された悲しい事件が幕を閉じたのであった。
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