事件解決編

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「……百美人などと呼ばれて調子に乗っていたが、あの娘たちは美人とは程遠い死に方だったよ」  最初のうち、公業は娘たちの首を絞め殺していたそうだ。当時は絞殺しか思いつかなかったし、縊死として誤魔化すことも可能だったからだ。しかし、首を絞めると最期に尿などの体液が体から出てしまう。そのため、死体は汚らしく処理も煩わしかったという。  ところがある日、聡一一座の公演で『耶蘇服を着た少女の磔の術』を見て、彼はいたく感銘を受けたらしい。華子が血まみれになって死んでいく、その美しい姿に魅了されてしまったのだ。それ以来、美しい娘の美しい死に逝く様を見たいがため、美しいと評判の女たちを追い求め殺していったと告白した。 「だから、さっきも言ったではないですか。それにあなたもその目でしかと見たでしょう? 私は死んでいないし、本物の血も流していない。あれには全て《からくり》があるのです」  何度も華子が説明しても、森園公業は聞く耳を持たなかった。まるで磔の術に取り憑かれているかのごとく、ぶつぶつと己の主張を繰り返すばかりだった。 「なにが百美人だ。多くの美人と名高い娘を亡き者にしてきても、やはり本物の耶蘇服の少女・華子さんの美しさには勝てなかろう。業突く張りの娘たちの醜く歪む死に顔は、どいつもこいつも滑稽でたまらなく愉快だったよ。イヒヒヒヒ……」
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