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「麗治郎様、殺人事件と関係ない話はそのくらいにしてくださいな」
前回の事件で懲りている華子が、麗治郎のうんちく語りに待ったをかけた。
「失礼。今はペローより、百美人でしたね。でも、どうしてわざわざ座棺に入れるようになったのですか? これまではそんなことをしていなかったではないですか?」
「あぁ、簡単な話だよ。いよいよ機が熟したと?I天斎聡一に知らせるためさ」
「き、機が熟したって……華子を嫁にする時期が来たって教えたかったのか? それだけのために娘さんたちを、あんな目に遭わせたというのか?」
全く理解できない理由なき殺人に、その場にいた全員が唖然とした面持ちになった。
「今までずっとうまくいったのに探偵などという下衆な輩を送り込み、あちらこちらで嗅ぎ回ったそうじゃあないか。あの「大都日報社」の入れ込み具合も予想外だったよ」
「まさか、あの匿名の手紙はお前さんが出したのか?」
思い出したかのように聡一が訊ねた。
「私がそんな骨を折ると思うか? 小細工が得意なのは梅津だよ。新聞社に百美人殺人事件の偽情報を送るのは名案だと思ったのに、そこにまで邪魔が入るとは思いもよらなかった」
麗次郎の捜査で小細工の嘘がばれ、梅津の正体まで発覚しそうになった。そうなると、足手まといになる梅津は、ついにお役御免となってしまったわけだった。
「梅津にはだいぶ世話になったが、足がついたらおしまいだ。でも、こうなったのも誰のせいでもない、探偵である君のせいなのだよ」
言いがかりも甚だしいが、運よくそれが仇となり今回の捕り物に繋がった。
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