事件解決編

6/22
前へ
/208ページ
次へ
「華子を手に入れるためだと言っているが、どうして私が父親の敵などと一輝と環を騙したんだ?」  知らないうちに親の敵にされた聡一が、非難の声をあげた。だが、悪びれる様子もなく公業は答えた。 「私は騙したつもりなどない。奴らが勝手に私の言葉を誤って解釈しただけだ」  父親の敵を討つと誓った一輝は公業の思う壺にはまり、聡一を敵だと信じ込んでしまったのだ。 「私は若くて美しい女が好きなのだよ、探偵君。可愛そうに一輝は見ての通り、母親に似ずこんな面構えだ。まぁ、あの母親も若い頃は売れっ子で、器量よしと評判の芸妓だったが……私から散々金を巻き上げておきながら、あっさり別の男に嫁いだような尻軽女だった」  森園子爵は一気にまくしたてると、更に語気を荒げた。 「どいつもこいつも女という生き物は金、金、金が好きな強欲で、こちらが与える以上のものを奪おうとする。それなのに、私の顔を見るなり逃げ出しおって。せっかくの好意も無にして、あいつらは一体何様のつもりなのだ」  梅津を通して公業の申し出を受け入れた芸妓も、彼の姿を目にすると断りの連絡をしてきたという。もちろん、最初は何が起きたのか理解できなかったが、芸妓たちから同じような態度を示されようやく気づいたそうだ。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加