事件解決編

7/22
前へ
/208ページ
次へ
「あんな見てくれの悪い旦那に囲われているって知られたら、恥ずかしいだろう? だから、後で侍従とかいう男に連絡して、上手いこと断っちまったのよ」  裏でそんな陰口を叩く芸妓の本性を知り、堪忍袋の緒が切れたらしい。 「安千代は私を袖にしたくせに、イリュージョン松一が死んだ途端に泣きついてきた。哀れに思って店を出してやったのに、借金の返済は滞る上に文句ばかりで並べるばかり。挙句の果てに、この私と夫婦になってあげても良いとほざく始末だ。勘違いも甚だしいから、うるさい婆には口を閉じてもらったのだよ。その死に顔は若い頃の面影はなく、見るも無残な醜さだったわい。イヒヒヒヒ……」  興奮し切った公業は、つい余計なことまで口走ってしまったようだ。ちろん、その意味に気づかないほど、安斎姉弟は愚かではなかった。 「えっ? 今、なんて……」 「か、母さんは男と駆け落ちしたって言ったじゃないか!」 「ふん、誰がそんなことを言ったかな? お前たちの勘違いだろう」  客と駆け落ちしたと聞かされていた一輝と環の母親も、どうやら公業の手にかけられていたようだ。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加