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声をかけた百美人の中には、公業の申し出を受け小料理屋を営んでいた娘もいたそうだ。だが、新たに若くて美しい娘を見つけると、残酷にも邪魔だとばかりに殺してしまったらしい。
「そ、それじゃあ、うちの華子もいずれ……」
聡一の頭の中で一瞬、華子が死に絶える姿が浮かんだ。
「美しい華子さんに、小料理屋の女将は似合いませんよ。彼女は永遠に私の妻として、この屋敷に残る予定でした」
「あなたにとって華子君は特別なようだが、彼女だって年を取るのですよ?」
「……でも、この手で永遠に変えられることもできるのだよ」
何度見ても公業の笑みは不気味だった。
「ま、まさか、やはり華子も亡き者にするつもりだったのか?」
聡一はいらぬ想像をめぐらし、背筋が凍る思いだった。
「誰もそんなことは言ってはおらぬ。華子さんが私に忠実ならば、一生添い遂げることさえできるのだ。そのために特注でウエディングドレスを作らせたのに、訳のわからない《からくり》とやらのせいでこの始末だ」
皆がベッドの上に目をやると、美しいドレスがあった。どうやら、血糊の難を避けられたようで、ドレスは純白のままだった。
「失礼ですが、森園子爵。お見受けしたところ、あなたは僕よりも随分と年上のようですね。若い娘がお好きだと公言されましたが、華子君とは父と娘くらいの年齢差ではありませんか?」
「し、失礼だな、君は。私の年齢なぞ関係ないだろう。それに、妻を娶るなら若い方が良いに決まっているではないか」
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