事件解決編

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 若くて美しい娘が好きだと、森園公業は得意顔で公言している。それなのに、奇跡的に一輝は災難を免れていた。それにはどんな意味が隠されているのだろうか? 「若い娘が良いのなら、一輝さんだって近くにいたではないですか。どうして、彼女を……いえ、一輝さんがあなたに殺されなくて良かったと、我々は安堵するべきなのでしょう。でも、どうして彼女を標的にしなかったのか、僕には不思議でならないのです」 「れ、麗治郎様。それではまるで一輝が殺されても当然だと、言いたいように聞こえますよ」   麗治郎の人聞きの悪い言葉を、華子は訂正するようにたしなめた。 「はぁ? 何を馬鹿げたことを言い出すのかね? 探偵というのは何とも愚かなことを考えるものだな。一輝と華子さんを見比べてみなさい。私の言いたいことがわかるだろう」  透き通るような白い肌の華子も、今は顔色が悪く青白くなっている。その隣には健康的な一輝のふっくらとした顔が並ぶ。二人の顔を見比べても、麗治郎には皆目見当がつかなかった。 「僕には子爵のおっしゃりたいことが、一向にわかりません」  どう考えても、二人の違いなど判るわけがない。 「やはり、君は愚かだね。さっきも言った通りだよ。魅力のない一輝を手にかけるのは、時間と手間の無駄ということだ。所詮、こいつらは私の手駒に過ぎないのだからな。イヒヒヒヒ……」
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