79人が本棚に入れています
本棚に追加
一輝の不安な気持ちに付け込んで、森園公業は鶴天斎聡一を陥れるよう入れ知恵した。そして、その隙に娘の華子を手に入れるつもりで画策していたのだ。
「全ての作業や後始末は梅津や一輝さんたち任せ、自分の手を汚すのは百美人を殺す時だけ。操られるまま皆が子爵の手となり、足となっていただけだった。そうですよね、森園子爵?」
「も、森園子爵だったら、この人だったら、互いにわかり合えると思っていたのに……」
お互いに容姿に自信のない共通点を見つけた一輝は、森園子爵とは理解し合えるのではないかと勘違いしてしまった。しかし、森園公業に一輝に情けをかけるつもりはさらさらなかったようだ。
「確かに私は見栄えの良い方ではないが、醜女のお前なんかに同情される覚えはない!」
「な、なんだと、貴様! 今、何て言った?」
一輝を醜いと罵倒する公業に、今度は聡次が噛みついた。あっという間に公業に馬乗りなると、腕を振り上げた。
「聡次さん、やめて!」
もちろん、腕っぷしの強い聡次が相手では、森園子爵に勝ち目はない。身動きできない公業に対し、聡次は自分の思いの丈を吐き出した。
最初のコメントを投稿しよう!