事件解決編

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「一輝、こんな男に情けは無用だ。青髭じゃなくて、青瓢箪みたいな面しやがって! 一輝は嬢ちゃんみたいにうっかりじゃないし、減らず口は叩かないし、威張りん坊でもない。こんなに美しくて才能のある奇術師は、この世には一輝しかいないんだよ。それがわからないお前には、一輝を侮辱する資格はない」  真面目で奇術一筋だった男が、一回り以上も年下の一輝に恋をしてしまっていた。もうその思いは誰にも止められないようだ。 「あぁ、一輝。お前さんが男じゃなくて本当に、本当に良かった……」 「そ、聡次さん……」  一輝もまた実直な聡次に惹かれているようだ。今はまだ気持ちの整理がついていないようだが、そのうち自然に受け入れられる時が来るだろう。 「聡次さん、暴力に訴えても何の解決にもなりません。さぁ、落ち着いて彼を離してください」 「ふん、もう一度でも一輝の悪口を言ったら、今度はただじゃ済まないぜ」  麗治郎に諭されて、聡次は公業を赤子のように突き放した。そして、一輝に近づき、そっと肩を抱き寄せた。 「もう心配はいらねぇよ。俺がお前を守るから」 「……聡次さん」  たくましい聡次の腕に支えられ、一輝は安堵のため息を漏らした。
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