事件解決編

15/22
前へ
/208ページ
次へ
 最後の大事な場面で異母兄が現れて、麗治郎は子供染みた不満を吐いた。 「ちぇっ、異母兄さんが出てこなくても、事件は解決しそうだったのになぁ」 「何をほざくか、ボンクラ探偵が。森園子爵を逮捕するのは、我々警察の役目だ。何の権限もないお前は黙っていなさい。森園君、反論があるならば警察でゆっくりとうかがいましょう」 「は、早坂君。私は、私はこれから子爵議員として、この国のために働くであろう身の上。たかが芸妓のために私の輝かしい将来を、棒に振るような真似を国が許すはずがないだろう」  公業が必死に弁明するも、早坂信煕は表情ひとつ崩さなかった。それどころか、彼の暴言が返って信煕の怒りを買ったらしい。 「たかが芸妓とは聞き捨てならない言葉ですね、森園君。命は職業や年齢、性別に関係なく平等なものです。我々警察は国民の大事な命を守る重要な役目を担っています。その私たちの前で何人もの命を奪った鬼畜が、偉そうな口をきくものではありませんぞ。皆、こ奴をひっ捕らえろ!」  信煕の合図によって後方で待機していた警察官が、森園子爵を取り押さえた。 「わ、私を誰だと思っている、私は森園子爵、華族だぞ。お前らと違って爵位のある立派な身分の、子爵議員にも……お、おい、どこへ連れて行く気だ? は、早坂君! こいつらを止めてくれ。なぁ、助けてくれよ!」  もちろん、警察官である早坂信煕は聞く耳を持たなかった。 「私は警察の人間だ。罪を犯したお前を助ける筋合いなど一切ない。とっととその男を連れて行け!」 「は、早坂……君。は、離せ! はや、はやさ……助けてくれぇ!」  最後の最後まで、森園子爵は無様に喚き散らしていた。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加