事件解決編

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~散りゆく乙女の淡い恋~  簡単な事情聴取を終えた華子は、すぐさま病院に駆けつけた。森園子爵に襲われ怪我を負った、溝口の様子が気になって仕方がなかったからだ。怪我の手当てをし、頭部の検査を受けた溝口を見舞い、華子は素直に礼を述べた。 「お怪我の程度が軽くて安心しましたわ。胴着の血糊が多過ぎたようですが、それで私は命拾いができました。これも溝口さんのお陰です、本当にありがとうございます」 「いえ、いえ、お礼なぞ結構ですよ。失敗作でも役に立てたのなら、それでだけも充分だ。それにしても、お嬢さんも素直になれるんだな。これなら俺も安心して、聡一一座を去ることができますぜ」  溝口の突然過ぎる発言に、華子は自分の耳を疑った。 「えっ? い、今、何ておっしゃいました?」 「実は座長や聡次さんには話していたのですが、青山さんの口利きで本所区(*現:隅田区)菊川町にある宮原製作所で自転車の開発に携わることになりました。ゆくゆくは一月に築地~上野間でお披露目された自動車や、オートバイなる自動二輪車を作りたいと望んでいます」  力強い口調で溝口が高らかに宣言した。
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