事件解決編

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「溝口さんは良い男だもの、恋人くらいいたっておかしくないじゃない。惚れた男が全く女にもてないのも、格好悪いと思わない?」 「よ、よくわからない。わ、私にはまだ……そ、それに、溝口さんのことは、べ、別に……」  泣きながら強がりを言う華子だが、自分の気持ちに気付いていないだけかもしれない。今はまだ恋愛とは何かなどわからなくて構わない。そのうちに嫌でも時が全てを教えてくれるだろう。志乃はそんな風に華子の気持ちを受け止めた。 「でも、安心したわ。華ちゃんが見てくれだけで殿方を選んだりする娘じゃなくて」 「あ、当たり前です。わ、私は顔が良いだけの能なし男は、に、苦手ですもの」 「ほら、やっぱり! 華ちゃんは溝口さんのことが好きだったんじゃない」 「も、もう、志乃さんたら……」 「いいのよ、素直に認めなさい。誰も華ちゃんの気持ちを、否定することはできないのだから」 「し、志乃さん……」  そっと寄り添う志乃の肩で、華子は思い切り苦い涙を流した。泣いて、泣いて、涙が枯れるまで泣いたら、胸の痛みが治まるだろうか? 溝口への想いを断ち切れるだろうか? そんなことをぼんやりと考えながら、華子は志乃の温もりを肌で感じていた。
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