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満開
次の朝、学校に行くと
サクラお爺ちゃんの話は既に、
皆が知っていた。
「 歳だから、いつかは・・・
仕方ないよ。」
一樹は、大和とそう話していた。
「 あのさぁ。あの、何か出来ないかな。」
「 何かって、なに?」
「 例えばさ、サクラ咲かせるとか。」
「 ・・・・・・ 」
あまりにも無茶な提案だったが、
たった一人賛同してくれた人がいた。
「 私もそう思っていたの。 」
恭子ちゃんだった。
「 あと1ヶ月ちょっとで、
今年もまた、正門前の桜が綺麗に咲くの、
なのに、お爺ちゃんはもう、
この世にいないかもしれない。」
「 そんなの・・・辛すぎるよ。」
「 でもさぁ、実際咲かせる事は無理だし、
少し南で咲きそうな場所ないかなぁ。
あれば、咲いたのひらって来て、
つけようぜ・・・って、
無理だな、無理。はははっ。」
「 あのさぁ。恭子。」
「 うん。」
恭子の肩を軽く叩いて、
美咲が話しかけてきた。
「 ごめんね。会話聞こえちゃって。」
「 ううん。大丈夫だよ。」
「 去年さぁ、演劇部で花咲かじいさん
やったときのね、
桜が沢山あるんだ。」
それは、演劇部伝統の演劇で、
毎年、卒業生から不要になった制服の白いシャツ生地を集め
サクラの花びらに切り込み、
美術部協力のもと、淡いピンク色に染めた
なんとも綺麗なサクラの花びらだった。
創立当初は、伝統的な花咲かじいさんだったが、
今ではアレンジを加え、
イケメン花咲かじいさんと題され、
一つの恋愛物語へと変化し毎年大反響の恒例行事となっている。
「 えっ!それ、すごいアイデアじゃん!」
「 あれって、本物に見えるもんな。」
「 でも、そんなの勝手に使うのまずいんじゃないか?」
「 先生に相談した方がいいかもな。」
「 先生って誰だよ。担任の武田はダメだろう。
あいつ、頼りないからなぁ。」
「 おい!」
「 誰が頼りないって・・・。」
「 だから、武田だよ、武田。」
「 ・・・・・・ 」
「 うわわわわぁ!」
一樹の後には、担任の武田先生が立っていた。
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