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しばらくすると、再び病室の扉をたたく音がした。
「 コンコン 」
見知らぬ男性が室内へと入り、
男は小声で、すずに話しかけてきた。
「 すみません。こちら、啓介、
あっ、村上啓介の病室でよかったでしょうか?」
「 あっ、はい。」
すずは、返事をしながら声のする方へ振り向いた。
目の前には、スーツ姿の男性が一人扉の側に立っていたが、
すずの顔を見るなり、
とても驚いた様子で、一瞬表情が硬直していた。
「 あの。何か?」
「 あっ!」
「 いや、その、あぁ、啓介具合どうですか?」
「 まだ、意識が戻らなくて・・・。」
「 そうですか。
あっ、私、学生時代の同級生の倉元一樹と申します。」
偶然、一樹は啓介の携帯に電話をいれていた。
電話口では、啓介が出る事は無く、
鑑識へ届ける途中の、刑事が出た為、
事情を聴き慌ててこちらへ来たのだった。
「 事情は聞きました。」
「 本当にごめんなさい。」
すずは椅子から立ち上がり、深々と頭を下げていた。
「 いや、君も被害者じゃないか。
謝る事は一切ないよ。」
「 それに、あなたが無事で良かった。
啓介は昔から、自己犠牲の強い男だったから、
自分に何か起こっても、
一緒にいたあなたが無事なら、
充分満足してると思うよ。」
「 だから、一切気にしないで!」
きっと、啓介ならそう伝えると思い、
一樹は代弁する様に、すずへと伝えた。
「 あの、失礼ですが、
もしかして、ケーキ屋さんの?」
「 えっ。 あ、あっ、はい。」
「 やっぱり!
啓介いつも、君のこと楽しそうに話してたよ。」
「 行きつけの居酒屋でね。しょっちゅう差し入れだって、
ケーキ買ってきては、皆に振舞ってたよ。」
「 すっごく美味しいケーキだったから。
皆に評判でさぁ。。。
あっ、すみません。
別に、今話す話題でもないか・・・。」
「 あっ、いえ。」
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