ザーザー音から

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 その日、晴絵(はるえ)は早くに床に就いた。  だがなかなか眠れないでいる。眠りたいと思っている意志に反して頭は冴えていたのだ。  仕方なく彼女はベッドから立ち上がり棚の上に置いてあるコンポを触り始めた。 「えっと……そういえば新しいコンポだからラジオ局の登録してなかったっけ……」  晴絵は眠れない時はよくラジオを聞くようにしている。そうすることによって何時の間にか眠りにつくことができるからだ。  先日古いコンポから買い換えたばかりなのでいつも聞いているラジオ局は登録されていない。その為ラジオの周波数を合わせなければならない。晴絵は電源を入れ、回転式のつまみをどんどん回していった。  ザーザー……。ラジオの周波数特有の砂嵐の音が流れる。その音を聞きながら暫く回しているとボソボソと話声が混じってきた。この状況はつまり、ラジオ局を少しキャッチしている状態だ。もう少し回していけばラジオ局に辿り着くはずである。そう思った晴絵はどんどんつまみを回していった。  しかしどんなにその周辺の周波数を探しても、なかなかラジオ局に辿り着かない。 「あれ、おかしいな……絶対この辺にラジオ局があるのに……」  いつも聞いているラジオ局の周波数に合わせたが、なぜかラジオから番組が聞こえてこないのだ。虚しくも聞こえてくるは砂嵐の音だけ。 「まさか壊れてる?」  晴絵はそう思い、確認の為紐状のアンテナをちゃんと伸ばし角度をあらゆる方向に変えてみた。だが番組は一向に入らない。初期不良を疑ったがもう少し様子を見ようと、再びラジオ局を探し始めた。  暫くすると再びあのボソボソ声のする砂嵐の周波数に辿り着いた。またかと思ったが何を言っているのか少し気になった晴絵は、そのボソボソ声に聞き耳を立ててみることにした。  ザーザー……。やはり聞き取るのは無理だった。諦めてつまみを回そうとした時、なぜか砂嵐の音が薄れて声が少しはっきりするようになってきた。 「あれ……?」
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