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不思議に思いつつもそのまま聞いていると、その声は徐々に鮮明になり始め、声質が聞き取れるようになっていった。どうやら1人の女の人がブツブツ言っているようだ。しかしその声を聞いていると、晴絵は徐々に気分が悪くなっていく。
(何これ……この声……気持ち悪い……)
決して声が変なのではない。至って普通の女の人の声である。しかし発している言葉から嫌な感じがするのだ。
とても聞いていられないので晴絵はラジオを消そうと電源スイッチに手を伸ばす。が、ボソボソ声は徐々に鮮明になっていき、ついにその声がはっきりと聞こえてしまったのだ。
「……ゆる……さない――」
その声を聞いた瞬間晴絵の全身に鳥肌が立った。霊感がまったくない晴絵でも良くないものを感じとれたのだ。そしてその声は延々と『許さない』という言葉だけを繰り返している。
あのボソボソ声はこれだったのか。そう悟ってしまった晴絵は冷や汗が止まらなかった。そして彼女はもう1つ悟ってしまった。
今も繰り返し聞こえてくる『許さない』という声。それはラジオからではないということだ。確かに最初のボソボソ声はラジオから聞こえていた。しかし何時の間にか今では……。
「う、嘘でしょ……!?」
顔面蒼白の晴絵は、慌てて部屋を明るくしようと照明のスイッチがある所へ行こうとした。寝る為とはいえ、部屋を薄暗くしていたことを後悔しながら。
しかしそんな彼女の前方に黒い塊が浮き上がってきた。
「えっ!?」
薄暗くてもなぜかはっきりと見えてしまうそれは、女の生首だった。生首が宙に浮いているのだ。真っ白い肌に所々焼け爛れた箇所がある。
晴絵は堪らず尻餅をついてしまった。そんな怯えた彼女をさらに追い詰めるかのように、生首が凄まじい形相でこちらに向かってきた。
晴絵は怖さのあまり声が出ず、そのまま意識が遠のいていった。
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