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岬は呆然としていた。
「佐田君、場所はすぐ判ったみたいですね。」
本上は笑いながら近付いてきた。
ここは、岬がエンジニアをしていた時に時々使用していた場所だった。
岬はここまで来て、初めて本上が御得意様では無く、会社の株主の専務だと気付く。
「ああ、今日は仕事じゃないから、様付けは止めて欲しいですね。気分が萎えますから。」
岬の言葉の先を詠んでいく。
「今日は私の友達ばかりですから、私の事は雄大と呼んでください。岬君」
何も言えなかった。岬は萎縮してしまった。
「オィ、雄大。今日はお前転がすのか。」
「いや、今日は新顔のダチと一緒だから高みの見物を楽しむ。」
岬は何を話すべきかわからない。
「あの…本上様…」
「ああ、雄大と呼んで貰いたいのだが。」
「あっ、雄大様で…」
「雄大」
「雄大…さん…」
「ああ、岬に呼び捨ては無理か。まぁ今日はそれで我慢します。」
本上に呼び捨てにされ、岬は心拍数が一気に上がる。岬は決して友人が少ない訳では無いが、岬を呼び捨てにする友人はいなかった。
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