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ピットの中から、コースを見つめる。岬は、コースを走る車に視線を向けた。
確かにこのコースには危険は無い。元々エンジンの耐久性を測るコースだ。
そんな岬の目の前で、車がスピンした。
「おい、どうした?」
「分からん。いきなりブレーキが…」
「危ない!」
コース場が急に慌だしくなる。
「岬はここから動かないで。」
「エッ、」
本上は急いでコース場に飛び出す。
岬は何も出来ずに呆然としていた。
すぐに、コース場では消化作業が始る。岬は、その光景に動揺した。
立っている事が出来ない。
岬は声も無く震えていた。
時間にして数分のことだった。岬には永い時間だった。
「岬…」
叫び声で気を失っていた事を岬は知った。
「岬…」
目の前に本上の心配顔が写し出された。
「アッ、ぼく…また…」
「大丈夫ですから、彼には軽い火傷だけですみました。岬は大丈夫ですか?」
「アッ、ごめんなさい。僕あの時のこと…」
「大丈夫です。アイツも調子に乗ってスピードだし過ぎただけです。そこに、エンジンがオーバーヒートしただけです。だけど、さすがエンジニアですね。先程言ってた車ピッタリ二周で止まりましたね。さすが岬です。」
岬が気を失った事には触れずに本上は笑いながら話してくれる。
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