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あれは雨混じりの雪が降る十二月の始めだった。岬はその日少し風邪気味で、祖父の法事に出られなかった。
「岬、お母さんはおじいちゃんのところに行ってくるから、ちゃんと休んでね。冷蔵庫に温めればすぐ食べられるお粥があるから、それが無理なら、フルーツが切ってあるから、少しでも食べなさい。解ったわね。」
「お兄ちゃんのことも渚がちゃんとおじいちゃんにお話しして来るからね。」
妹の渚にまで心配させていた。
「んっ、ごめんね。僕の事も忘れないように頼んで来てね。」
「わかった。」
両親と渚を見た最後だった。
夜中に呼ばれた気がして目覚めた。パジャマが汗で濡れて気持ち悪い。
そんな時居間の電話が鳴った。岬は不安になり時計を見る。二時を指していた。
急かすような電話の音…
岬は受話器を取る。
「はい、佐田です。」
(岬君落ち着いて聞いて)
電話口から聞こえた話が岬をパニックにした。
「それで…」
後は岬はどうしたか自分でも解らなかった。
父さん達の乗った車が事故に巻込まれた。三人共ほぼ即死だった。
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