482人が本棚に入れています
本棚に追加
「佐田君、本上様の事はどうなりました?」
鈴木係長に呼び止める。
「それは…」
岬は口ごもる。
「一度連絡してみたらどうですか。」
「ハァ。」
岬はまだ迷っていた。
テストコースでの失態が頭を過る。
名刺入れに入れたままの本上の名刺を見る。
深い溜め息が漏れた。
「どうしたんだ。」
先輩が岬に声を掛ける。
「いえ、本上様に連絡するべきですよね。」
「あっ、本上様って本上エンジニアのか?」
「いえ、本上様の個人的な車を探しているようで…」
「じゃあ、いつもと同じ感じで良いと思うけど。どうしても無理なら俺もホローするからやってみれば。」
先輩の言葉に押されるように携帯を取り出す。
迷ったが、本上のプライベートに電話した。
「佐田と申しますが、本上様の携帯でしょうか?」
(岬か、電話待ってましたよ。あの後大丈夫でしたか?)
「はい、その節はご心配お掛けして申し訳ありませんでした。それでですね、あの車ですが本上様の希望を聞きたいのですが、お時間頂きたいのです。」
(そうですね、ああ、今度の金曜の夜なら時間取れます。よろしいですか?)
「はい、僕の方は大丈夫ですから。では、また連絡します。」
岬は緊張を抜き、手帳に控える。
最初のコメントを投稿しよう!