契約

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あれからも、岬は契約が取れない。係長にもいろいろ言われる。 だが、岬には無理だった。 「佐田君、本上様はどうなりました?」 「えっと、その…」 「接待でもして、あの方なら必ず契約が取れますから、頑張ってくださいね。」 係長の言葉が苦しい。岬は、何度となく携帯を開く。番号は登録してある。 「佐田は何をためらうんだ?」 先輩が岬の後で携帯を覗く。 「いえ、その…」 「一件契約取れば後は取りやすくなるから、頑張ってみろ。」 先輩の言葉に携帯の番号を押す。 コール二回で本上は出た。 「あの、佐田ですが…」 (ああ、岬、連絡待ってましたよ。) 「あの、先日は本上様の希望が聞けませんでしたので改めてお時間頂きたいのですが…」 (ンー、そうだな。私も上手く時間が取れなくて、あっ、そうですね、岬が大丈夫なら、私のマンションに来て貰えませんか?) 「ですが…」 (大丈夫ですから、地図はメールしますね。九時頃なら大丈夫ですから。) 「分かりました。九時頃そちらに伺います。」 岬は携帯を切った。 「まぁ、頑張って、取り敢えず資料を調えて、行くだけで良いから、失敗しても係長がホローするって。」 先輩の言葉に従い資料を調える。
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