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「お名前聞いてもよろしいですか?」
「アッ、ごめんなさい。僕は岬です。」
「岬さんですか。僕の事は誠と読んで下さい。」
「誠さん、あの…僕…」
「岬さん、先ずは乾杯しませんか?」
彼なりの優しさなんだろう。岬は、思い切って店を訪れた事に安堵した。
「エット、何に乾杯しましょうか。」
「僕の新しい未来に乾杯して下さい。」
岬は、思い詰めた顔で口を開いた。
「では、僕達の未来に乾杯しましょう。」
誠がグラスを軽く合わせる。
「僕、今日会社を辞めたんです。」
岬はポツリと呟く。
「まだ若いのですから、いろんなことは有りますよ。」
誠は優しく微笑む。岬は俯いてしまった。
「だけど…」
「ここの店に来店される方はいろいろ有ります。皆さん訳ありの方が多いです。僕も含めて…」
岬が涙を堪えているのが解る。
誠は優しく岬の肩を抱き寄せ囁く。
「話して楽になりましょう。岬さんは大丈夫ですから、解決しないとは思いますが、少しは楽になるかも知れませんよ。」
誠に励まされるように話し出した。
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