ホストクラブ

4/4
前へ
/174ページ
次へ
「お名前聞いてもよろしいですか?」 「アッ、ごめんなさい。僕は岬です。」 「岬さんですか。僕の事は誠と読んで下さい。」 「誠さん、あの…僕…」 「岬さん、先ずは乾杯しませんか?」 彼なりの優しさなんだろう。岬は、思い切って店を訪れた事に安堵した。 「エット、何に乾杯しましょうか。」 「僕の新しい未来に乾杯して下さい。」 岬は、思い詰めた顔で口を開いた。 「では、僕達の未来に乾杯しましょう。」 誠がグラスを軽く合わせる。 「僕、今日会社を辞めたんです。」 岬はポツリと呟く。 「まだ若いのですから、いろんなことは有りますよ。」 誠は優しく微笑む。岬は俯いてしまった。 「だけど…」 「ここの店に来店される方はいろいろ有ります。皆さん訳ありの方が多いです。僕も含めて…」 岬が涙を堪えているのが解る。 誠は優しく岬の肩を抱き寄せ囁く。 「話して楽になりましょう。岬さんは大丈夫ですから、解決しないとは思いますが、少しは楽になるかも知れませんよ。」 誠に励まされるように話し出した。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

482人が本棚に入れています
本棚に追加