月下美人

異動

営業に配属になり二週間が過ぎた。
まだ一件も取れていない。
自分には無理だ。解っていた。
今日も、阪井先輩の後を付いていただけだった。
「阪井先輩、僕には無理です。」
岬は何度と無く訴えた。
「初めから旨くいく訳ないだろう。少しづつで良いから、頑張るだ。」
だけど、このまま契約が取れなければ、先輩の評価も下がってしまう。
岬はそれが怖かった。自分が悪く見られるのは慣れているが、自分の為に先輩の評価を傷付ける事の方が遥かに怖かった。