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「人って大きくなったら海に帰るんだって!おばあちゃんが言ってた!」 「海に帰る?どういう意味だよ?」 「さぁ、分かんない」 ガキの時分、そういやそんな話もしてたっけと、今更になって思い出す。果てしなく奥に続く海をずっと眺めていると、頭の奥底にある記憶が、気まぐれきかせてぽっと浮かび上がってくる。ざざーん、と波打つ音を聞きながら、高い崖の上に座って、一人でぼーっと海に目を配っているときだった。 「あ、やっぱりここにいた!」 波の音がうるさくても、昔からずっと聞きなれている声は、何者にも邪魔されることなく、すっと耳に入ってきた。無邪気で明るい、そんな声がする。 「エミ」 後ろを振り返ると、そこには幼馴染のエミがいた。にこっといつも笑顔を絶やさない、そんな奴だ。エミがやっぱりと言ったのは、ここが昔から俺とエミが二人で良く来ていた場所だからだろう。ここから海までは随分と高さがあり、落ちたらただではすまない絶壁だというのに、俺もエミも子供の頃怖がらずに何度も来ていたものだ。 「やっぱりいいよね、ここ。潮風が気持ちいいし!」 エミは当たり前のように俺の隣に座り、足をぶらんと宙に放り出す。何度も見ているのに、俺はエミの横顔を間近で見るたび、少し胸の鼓動が速くなる。綺麗だなと、可愛いなと、いつも思ってしまう。いつかいつかと思いながらも、俺はエミに告白できていないし、エミから来ないかな、と考えないこともなかったが、いくらたっても音沙汰なしだから、エミにとって俺は、ただの幼馴染なのかもしれない。恋っていうのは、恥ずかして面倒な代物だ。 とはいえ、そんな苦悩も、明日ですべて終わる。
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