3幕『帰蝶ではなく濃姫として』

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   濃姫はふとんのそばに正座したまま、信長を見ようとしない。 「待たせてすまなかった」 「構いませぬ」  濃姫は淡々とした口調で返す。 「帰蝶と申します」 「年は13と聞いた。少し、大人びているな」 「左様にございますか」 「今宵(こよい)はすまなかった」 「構いませぬ……形式上の婚儀に、夢など持っておりませぬ」 「……そうか。きょうは疲れているはずだ。明日またゆっくり話そう。灯りを消すぞ。早く休むといい」  だが、濃姫は動かない。  灯りを消し、振り返ると、きらりと光るものが目に入る。  
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