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濃姫はふとんのそばに正座したまま、信長を見ようとしない。
「待たせてすまなかった」
「構いませぬ」
濃姫は淡々とした口調で返す。
「帰蝶と申します」
「年は13と聞いた。少し、大人びているな」
「左様にございますか」
「今宵はすまなかった」
「構いませぬ……形式上の婚儀に、夢など持っておりませぬ」
「……そうか。きょうは疲れているはずだ。明日またゆっくり話そう。灯りを消すぞ。早く休むといい」
だが、濃姫は動かない。
灯りを消し、振り返ると、きらりと光るものが目に入る。
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